【旅の総括:ゴーゴーバー】

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まずは出費。昼食、夕食、買い食いなどの食事代、寺院の入場料、健全マッサージ代、タクシーやBTSなどの交通費を合計した一日あたりの出費は500~1000B程度だった。平均すると一日あたり700Bぐらいである。つまり、宿泊費と夜遊び代を除けば、寺院観光してマッサージを受けて屋台メシを食って一日2000円程度で済むわけだ。しかし、夜遊びに勤しむのでそうはいかない。日によっては昼間にマッサージパーラーへ繰り出し夜はゴーゴーバーをはしごして持ち帰る。7日の平均をとってみると1日あたり遊び代だけで5000Bであった(マッサージパーラー含む)。

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【不治のゴーゴーバー依存症】

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先日、お気に入りのゴーゴーバーの動画を発見した。絶対にこんなことをしてはいけない。薬物中毒の人間に薬を与えるようなものである。ゴーゴー中毒の小生は見た途端、体温と心拍が急上昇し目まいがしてきた。のうのうと日本にいる場合ではない。早くバンコクへ行かなくては。聞き覚えのある爆音に見覚えのある顔がちらほら。いてもたってもいられない気分だ。

この時、小生はゴーゴー依存症は決して治らないことを悟った。例え何年もゴーゴーバーの禁欲に成功したとしても、脳ミソの深いところにあの恍惚とした雰囲気は刻み込まれており、間違ってその記憶に気付くようなことがあれば、自らの強烈なゴーゴー依存を認識するのである。小生にとって天国があるとすれば、青空で花畑が広がるような場所でなく、怪しいライトがダンスする娘を照らし爆音が鳴り響くゴーゴーバーである。

 

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【ゴーゴー依存症の人間が下した決断】

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日本に帰国してからというもの、バンコクのこと、ゴーゴーバーのこと、Tちゃんのことばかり考える日々だ。気付けば無意識にバンコク行きの航空券をネット検索している。帰国してから1週間経った時、当然の結果として小生はバンコク行きのチケットを確保した。ゴールデンウィークに予約していた上海行きをキャンセルし、バンコク行きを予約したのだ。

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【帰国して発覚する強烈な依存症】

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寒さに覚悟して成田に降り立ったが恐れていたほど寒さはなかった。どうやら2月にしては暖かい日だったようだ。上野駅で電車を降り街の雑踏に紛れて歩いていると『ここは自分の居場所ではない』と強く思い始めた。街を歩くたくさんの人々、立ち並ぶ高層ビル、全てが偽りに思えた。頭の中ではお気に入りのゴーゴーバーの音楽が鳴り響き、音を捉えて弾けたように踊るIちゃんのダンスや余裕タップリ優雅に踊るTちゃんのダンスがぐるぐる回っている。ゴーゴーガールがステージに上がる時にワイをする愛らしい光景がフラッシュバックしたり、Tちゃんの喋る魅惑的なタイ語が空耳で聞こえることもあった。

一週間休んだせいで仕事は十分に溜まっていた。が、そんな仕事に追われながら帰国後5~6日は頭の中のゴーゴーバーに完全に支配されていた。パソコンしているとつい無意識にバンコク行きの航空券を検索していた。気付くとついついTちゃんの写真を見ていた。バンコク滞在中は夢の中にいるものだと思っていたが、帰国してみると日本での日常が非現実的な偽りで夢の中のように感じられた。『嗚呼、バンコクに戻りたい…』寝ても覚めてもそれしか考えられなかった。

 

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【最後の夜をゴーゴーガールTちゃんと】

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Tちゃんはおしゃべりで誰にでもすぐに話しかける。いまホテルへ向かって乗っているタクシーの運ちゃんにも話しかけている。今日一日中、Tちゃんと一緒に過ごしたわけだが、タクシーに乗ってもトゥクトゥクに乗っても話しかける。で、片言の英単語で、この人の奥さんはマレーシア人だって、とか色々伝えてくれる。小生がタイ語が出来れば、Tちゃんにとっても小生にとっても、もっと楽しいものになったに違いない。タクシーの中でTちゃんのタイ語を聞いていた。彼女のタイ語は柔らかい抑揚で聞いていて心地良く可愛らしい。

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【ゴーゴーガールTちゃんと夢の続きを!】

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次の日、約束どおりTちゃんは小生との観光巡りに付き合ってくれた。小生はTちゃんと時間を過ごせることに大きな幸福感を感じると同時に、旅の終わりが近づいていることに寂しさを感じていた。帰国は翌日の早朝の便である。

BTSとエクスプレスボートとトゥクトゥクを乗り継いで、やってきたのはウィマーンメーク宮殿。ラーマ5世が実際に生活していたタイ欧折衷の木造の大建築で、これだけ巨大な総チーク材造りの3層建築は世界的にも珍しいらしい。ガイドツアーの説明を聞きながら宮殿の中を見て回る。特に3階にある王の浴室は、ラーマ5世当時の雰囲気を知ることができる。

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【ゴーゴーガールと常識を超越した夜】

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タクシーで小生のホテルへ向かった。タクシーではTちゃんの体を引き寄せて、彼女の手を握りしめていた。ホテルに着いてフロントでTちゃんがIDチェックを受けている時、小生はふとTちゃんは元男性かもしれないなと思った。ゴーゴーバーでは気付かなかったが、タクシーで彼女の手をずっと触っていたときに少々骨っぽさがあったのだ。ただ、小生は不思議とそれでも構わないと思った。もし例えTちゃんが元男性であっても一緒に時間を過ごしたいと思った。思い切り抱きしめて眠りたいと思った。そう、もうすっかり小生はTちゃんに脳ミソをやられていたのだ。

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【ゴーゴーバーでの究極の選択】

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Iちゃんは未成年で日本人が好きそうな可愛らしい童顔で肌は色白で体つきは小柄、少し痩せすぎのようにも見えるが、弾けるようなダンスがとてもセクシーで魅力的だ。Tちゃんは最初そもそもIちゃんを薦めてきた子で初めは全く気にとまらなかった。が、ビールを飲みながらTちゃんを見ていると、体型は太ってもなく痩せすぎでもなく足がすらっと長く、鏡を見ながら優雅に艶かしく踊っており、また何かに媚びるようなところが全くなくあっけらかんとしていて本当に格好いいタイガールだ。Tちゃんはいつも回りのゴーゴーガールと楽しそうにお喋りしており、性格もとても良さそうだ。何より彼女はよく笑っているし、その笑顔がとても美しい。小生は多少酔っ払った頭で、Iちゃんをペイバーしようか、Tちゃんをペイバーしようか考えていた。

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【ゴーゴーバーで切なさに襲われたら】

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夜が待ちきれないという気分で、お気に入りのゴーゴーバーに8時に入る。ここのゴーゴーバーの本格稼動は9時以降であり、まだ女の子は1,2人しかいないし、スタッフも開店準備中といった様子である。帰国の日が近づくにつれ感傷的な気分になっていた小生は、そんな寂しい店内の奥に座った。

まだ開店準備中ということなのだろう。DJはメローな曲を続けてかけている。そこで流れていた曲が「Careless Whisper」である。この曲が持つ圧倒的な切なさに包まれて、帰国が近づくにつれて増していた哀愁感が一気に膨れ上がった。何故か分からないが、この開店準備中の寂しいゴーゴーバーの店内が、小生の脳ミソに強く焼きついた。

日本に帰国した後、バンコクのことを思い出し無性に「Careless Whisper」を聞きたくなることがある。また、この曲を聞くと、あの開店準備中の寂しい店内と切ない気分を思い出すのだった。

 

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【小生にとってのゴーゴーバー】

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仕事、プライベート、結婚生活、全てに何も不満はないが、あらゆるものが日常になってしまった。噴火しそうな情熱もなくなってしまい、淡々と時間が流れる日々である。しかし、今回タイというかゴーゴーバーに訪れてみると自分自身も忘れていた本能に直結した色々な感情が蘇ってくるのに気付いた。息絶えてすっかり忘れていた感情が一気に開放される場所、それが小生にとってはゴーゴーバーである。

踊りたい衝動に駆られる音楽を爆音で浴びる、そんな音楽に身を任せてダンスする、これは太古の人間から持つ本能的な快楽に違いない。さらに、水着姿で音に乗って華麗にダンスするタイガールを見ながらビールを飲み、性欲の高まりを感じつつアルコールで脳ミソを麻痺させる。時にはショーも楽しみ、彼女たちの激しさと可憐さに感嘆しつつ性欲の更なる上昇を確認する。セクシーなタイガールを横につけて会話したり一緒に踊ったりした時にはもう恋に落ちている。ペイバーしてベットインすれば、ココロの酔いは極限に達する。あらゆる本能に直結した快感を享受できる場所は、ゴーゴーバーしかない。お気に入りのゴーゴーバーなんかにいると、そういった様々な快感が脳内麻薬となって脳ミソに分泌され酔いと相まって『ここが天国なんだな~』と心底思う。

 

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