新国際線ターミナルがオープンし、新滑走路の供用が開始される10月21日が近づいてきた今日この頃、羽田空港に関するニュースも日に日に増え、世間も小生の中でも盛り上がってきた。羽田空港と成田空港の今後の動向についての記事を転載したい。個人的な希望としては、羽田空港は人気の国際線が揃った完全な24時間空港に、都心から遠い成田空港はマイナーな路線と数多くのLCCが就航するLCCが特徴の空港になって欲しいと思う。
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『羽田特集:大交流時代へ-成長戦略から見る首都圏空港の将来像』
[掲載日:2010/10/05] TRAVEL VISION
10月21日に第4滑走路の供用が開始され、本格的な24時間国際空港としての第一歩を踏み出す羽田空港。まず第一弾として昼間時間帯3万回、深夜早朝時間帯3万回の計6万回の発着枠が国際線に割りあてられた。昼間時間帯はアジア近距離のビジネス路線、深夜早朝時間帯は欧米を含む主要都市路線への配分が決まっている。定期チャーター便という位置づけだったソウル(金浦)、上海(虹橋)、北京、香港の各便も完全定期便化。「羽田=国内拠点空港」「成田=国際拠点空港」と役割分担を明確化してきた航空政策が、実質的に大きな転換点を迎えたことになる。航空・旅行業界がビジネスチャンスと捉え、新たな取り組みを積極的に進めているなか、いま一度、その拡張の概要をおさえておこう。
羽田空港拡張の展望
国土交通省は新たに策定した成長戦略のなかで、航空分野の重点項目として、徹底的なオープンスカイの推進とともに、羽田空港の24時間国際拠点空港化を明記した。国家プロジェクトである訪日外国人拡大も視野に入れつつ、将来の航空需要増大に対応する取り組みとして羽田空港の機能強化を重視し、「旺盛な首都圏の国際航空需要に対応するとともに、同空港の充実した国内線ネットワークを活用した内・際ハブ機能を強化する」と明記している。
羽田空港では今年10月の時点で、前述の国際線割当分を含め、全体の発着回数は昼間(午前6時00分~午後11時00分)33.1万回、深夜早朝(午後11時00分~午前6時00分)4万回に増え、2011年度中には昼間35万回、深夜早朝4万回の発着枠が可能になる(昼間1.9万回の増枠はすべて国内線ですでに配分済み)。さらに、2013年度中には、昼間40.7万回、深夜早朝4万回まで拡大する予定だ。
将来的な羽田空港の国内・国際間配分の考え方について、政府は昼間時間帯については「アジア近距離ビジネス路線に限定」としている現在のルールを廃止し、アジア長距離路線、欧米路線も含めた「高需要、ビジネス路線」にも枠を広げていく方針を打ち出している。この基本的な考え方に基づき、2013年度の増枠では昼間時間帯の増枠分5.7万回のうち、半分強にあたる3万回の発着枠を国際線に配分し、計9万回(昼間時間帯6万回+深夜早朝時間帯3万回)とする方針だ。現時点から計算すると、合計14.4万回の増枠のうち9万回が国際線に割りあてられることになり、国際拠点空港としての機能が拡充されることになる。
今年10月の国際線増枠は時間帯、路線とも限定的で、国際拠点空港といえるにはまだほど遠いのが現状。航空・旅行業界とも羽田国際化に対しては手探りの状況が続く。しかし、昼間時間帯が6万回にまで拡大される2013年度には、さらに柔軟な路線展開、スケジュール設定が可能になり、それにともなって幅広い旅行商品の造成も可能になることから、「大交流時代」に向けたビジネス競争がさらに活発になるのは必至だ。
成田空港、首都圏空港として羽田空港と共存
一方、成田空港の容量拡大も首都圏空港の強化において欠かせない取り組みだ。今年3月には、第2滑走路の伸張が完了したことで、年間発着枠が20万回から22万回に拡大。これにともない、エミレーツ航空(EK)、エティハド航空(EY)、カタール航空(QR)、マカオ航空(NX)が新規参入。成田発着のネットワークがさらに広がり、新しい旅行商品の展開も可能となった。
今後、地元との合意を条件に2011年度中に25万回、2012年度中に27万回、そして2014年度中には30万回に発着枠を拡大していく方針だ。これにより、首都圏空港全体の容量は現在の約52万回から2014年度までには約75万回と4割以上の増加が見込まれ、そのうち国際線発着枠は約20万回から約40万回に倍増。新成長戦略では、おおむね向こう10年間の需要を上回る供給量になると試算している。
ただ、成田空港には課題も多い。発着枠の増加にあわせて国際航空ネットワークを強化しつつも、ハブ空港としての機能を考えた場合、国内フィーダー路線の拡充も不可欠となってくる。また、首都圏空港として羽田空港との一体的な運用が求められているが、羽田空港の国際化がますます進み、ハブ機能が強化されていくなかで、成田空港の存在意義も変容していかざるを得ない。その点について、成長戦略では、成田空港について「LCCの本格的な参入促進をはかるために専用ターミナルを整備し、低コストオペレーションが可能となる環境を整える」と明記。さらに、ビジネスジェットの乗り入れにも柔軟に対応していく方向性が示されている。
さらに、羽田・成田の一体的活用においては、地上交通インフラのさらなる整備も求められているところだ。羽田空港を24時間国際空港として活用していくためには、深夜早朝でのアクセスの改善が必要となり、また一方、一体的活用を実現していくためには両空港間のアクセスの利便性も高めていく必要がある。成長戦略ではアクセス改善について、都心から羽田空港へは20分台、成田空港へは30分台、両空港間は50分台の実現をめざすと野心的な目標を立てている。
完全オープンスカイでハブ空港の競争激化必至
首都圏空港の発着容量不足が解消されると見込まれることから、成長戦略では、首都圏空港も含めた完全オープンスカイに向けた取り組みにも言及している。現在のところ、オープンスカイに合意している国・地域は、韓国、香港、マカオ、ベトナム、タイ、マレーシア、シンガポール、スリランカ、米国、カナダ。しかし、新規増枠分を圧倒的に上回る増便要望があったため、成田空港と羽田空港はオープンスカイ対象外で相手国を経由して第三国への輸送をする以遠権も対象とはなっておらず、限定的なオープンスカイにとどまっているのが現状だ。
首都圏空港もオープンスカイの対象に加わることになれば、競争が担保され、恣意的な行政介入の余地がなくなり、一定の市場メカニズムのなかで利用者の利便性が向上されていく。一方で、成長戦略で言及されているように、オープンスカイのもと民間の活力を可能な限りいかしていくことになると、アジアにおけるハブ空港の覇権争いがますます激しくなると予想され、今後はアジアを視野に入れた対応が求められてくる。
仁川空港も拡張プロジェクト、さらにハブ機能強化へ
成田・羽田にとって、今後も最大のライバルと目されるのがソウルの仁川国際空港だ。
現在でも、仁川空港と日本の地方空港を結ぶ路線が多く、そうした地方空港では仁川空港
が世界へのゲートウェイになっているは周知の事実だ。
現在、仁川空港も着々と拡張プロジェクトを推進している。2008年6月には拡張プロジ
ェクト第2フェーズが完了。第3滑走路がオープンしたことで、年間発着容量は24万回から
41万回に拡大、年間旅客処理能力も3000万人から4400万人まで増強された。加えて、空港
施設の効率化も進めたことで、最小乗り継ぎ時間(MCT)は45分にまで短縮された。
さらに、昨年からは第3フェーズの拡張プロジェクトがスタート。2015年までで4兆ウォ
ンを投じる大規模なプロジェクトで、第2旅客ターミナルの建設、貨物ターミナル、エプ
ロンなど既存施設が拡張される。このフェーズが完了すれば、年間旅客処理能力は4400万
人から6200万人に拡大する見込みだ。
仁川国際空港公社によると、戦略的な拡張プロジェクトを進めるとともに、主要マーケ
ットである中国、日本、アメリカからの旅客をさらに増やし、LCCの誘致も進めていくと
いう。また、オープンスカイの拡大にともなって急速に拡大すると見込まれている旅客需
要を取り込むことで、仁川空港のハブ機能を一層強めていく。最終的には滑走路5本、年
間発着容量74万回、年間旅客処理能力1億人という壮大なプランを掲げている。「2030年
には世界最高のハブ空港に」を目標に掲げている。
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