【彼女の地元スラタニーと地元の顔】

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ドアスコープを覗き込むと誰かが立っている。慌ててドアを開けると、久しぶりに見る顔がそこにあった。Bちゃんだった。電話を切ってから本当にすぐにやって来た。しかし、なぜか廊下にはもう一人、男が立っていた。失敗した!と即座に思った。当然、彼女だけで来ると思っていたし、一人で来るよう彼女に念を押していなかった。Bちゃんはその男を兄と紹介した。雨が降っているので、兄にモータバイクで送ってもらったのだと言う。本当に兄なんだろうか?ボーイフレンドだろうか?色んな想像が頭を駆け巡る。あれほど会いたかったBちゃんが目の前にいるというのに、彼女になかなかうまく微笑むことが出来ない。

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Bちゃんは日本語を勉強しているので、日本で買った本をお土産に渡した。これはタイ語を勉強する日本人にはもちろん、日本語を勉強するタイ人にも使えると書かれており、単語ごとに日本語とタイ語とそして日本語の読み方が分かるように読みがローマ字で併記されていた。しかし、Bちゃんはローマ字が読めないようだった。Bちゃんから返信はないものの小生はたまに日本から彼女へSMSを送っていた。極力、簡単な英語を使うように心がけていたが、恐らくそれも読めなかったのではないかとその時思った。彼女の日本語勉強の本を見せてもらうと、日本語の読みはタイ文字で書かれていた。シーフードでも食べに行かない?とBちゃん。そして、今日は仕事を休んだからスラタニーの街を案内してくれると言う。部屋に3人で居ても仕方ない。昼食を食べに外に行くことにした。

モータバイクに3人で乗り、Wang taiホテルを出発した。ホテルのすぐ目の前にあるレストランを指差し、そこで働いているとBちゃんが言った。毎日14時から22時までの勤務で、毎週月曜日が休みとのこと。電話のタイミングが合わない理由がここで分かった。ホテルの前を走るTalad Mai Roadはスラタニーの街を東西に貫く幹線道路と思われる。この道を東に向かって走り、1kmほどして南北に伸びるDonnok Roadと交差したところで左折、大きな橋で川を渡って、橋のふもとにあるシーフードレストランに到着した。

川沿いにあるレストランで周りも静かであり、ゆっくり食事を取るにはちょうど良い場所だ。川の中央にLamphuという小島が見える。Googlemapを見て想像を膨らませていたスラタニーの街やこの小島が目の間にあるのは不思議な感覚だった。スラタニーの街は想像していたよりずっと質素な街並みで人影も少なく、静かだった。定番のトムヤムクンに焼き飯、それに焼き魚と蟹も注文した。小生は男が何者なのか頭を悩ますのを止めて、Bちゃんに再会できた喜びにフォーカスしようと考えた。彼女との甘いやり取りを再現したくて隣に座った彼女のお尻や腰を触ったりしたが、彼女は兄がいるからダメよとたしなめるような仕草をした。兄がトイレに行き二人きりになった隙に、彼女にキスしたいと告げた。すると「ここスラタニーではそういうのはダメなの、それにプーケットでゴーゴーバーで働いていたことは内緒にしているから絶対に言わないで、ばれたら大変なの」と言った。小生の頭はまたフル回転で色々と考え始めてしまった。そんな小生を不憫に思ったのかBちゃんは不意打ちで小生の頬に軽くキスをした。蟹は小ぶりで味はそこそこだったが、魚は大きくて味も良かった。時折、川を漁師のボートが横切ったり、網を投げているのが見えた。兄も漁師だと言う。たまにBちゃんが料理を口まで運んでくれると、プーケットの蜜月の記憶がふと頭をよぎった。川の対岸には、ちょうどその日から始まったフードフェアなるイベントがやっているので、今夜はそこに行こうと約束した。会計は1300Bと異常に高かった。

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Facebookがあれば教えて欲しいというのでネットカフェに行くことにした。止まない雨の中、またモータバイクに3人で乗り、さっき渡った橋を戻り、スラタニーの街を走る。1軒のネットカフェに入る。中はオンラインゲームに興じる学生らが何人もいた。1時間15Bとのこと。バンコクのカオサンは1分1Bなので1時間60B、パタヤは30~60Bぐらいはするから、非常に安い。地方は安いということだろう。Facebookでお互いを登録したり、Facebookの写真を見せ合ったりしているうちに1時間近く経とうとしていた。兄が眠いというので一旦、家に戻ると言う。20時にホテルの部屋に行くから一緒にフードフェアへ行こうとのこと。ホテルまで送ってもらい、一度彼女らと別れた。

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(フードフェアのゲート)

雨が降っているが、せっかくなのでスラタニーの街を散策することにした。ホテルを出て目の前のTalad Mai Roadを東へ向かって歩く。幹線道路だけに交通量はそこそこある。が、人影は全くない。道路沿いに店がちらほら並んでいるが、歩いている人どころか人そのものをあまり見かけない。1kmほど歩いてDonnok Roadとの交差点を南に右折した。地図によれば恐らく交差点から南下するこの界隈が一番賑やかなのではないかと思われる。たえず車が通り、食堂や銀行など店舗が並んでいるが、やはり人が少なく活気というものが全く感じられない。来る前はショッピングモールが1軒ぐらいはあるのかと思いきや、あるのは小さい店舗ばかりで4階を超えるような高層のビルは見当たらない。地方都市ではなく街と呼ぶのが相応しい控えめな場所である。両替したいと両替屋を探したが結局、見つからずコンビニのATMで下ろすことにした。サムイ島ならいざ知らず、こんな街に滞在する外国人観光客はいないのだろう。1時間ほど街歩きをしただけだが、活気も刺激もないこの街に早くも飽きてきた。

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(スラタニーの街のメインストリートDonnok Roadの様子、交通量は多いが人影がとても少ない)

先ほどの交差点に2軒のマッサージ屋があったので入ってみることにした。1軒は店内がピンク色で怪しかったが痛々しいレディボーイがいたので恐れをなして、向かいの普通のマッサージ屋に入った。3階の大部屋に上がったが客はゼロである。中年の女性で、技術を感じさせるしっかりしたタイマッサージで満足した。なお、怪しいお誘いなどは一切なかった。相手は中年だし勃起しない妙な自信があったが、途中で何故かカチカチに勃起してしまった。が、その女性は固い棒を端に寄せて太もも付け根のマッサージに集中していた。しかし、勃起もするはずである。タイに到着して12時間以上経つというのに一発も放出していない。由々しき事態である。想定外である。

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(スラタニーの街のメインストリートDonnok Roadの様子、活気も刺激もない街である)

20時にBちゃんが部屋にやってきた。兄と共に。歩いてフードフェスティバルに向かって、中を見て回った。しかし、雨のせいだろう、ほとんどの屋台が閉まっており人もまばらで特設ステージも静かだった。小生らは諦めてBちゃんが勤めているステーキレストランに入った。といってもチキンやポークのステーキもある地元のレストランで、3人で飲み食いしても280Bである。

ホテルに戻り小生は「泊まっていけるよね?」と聞くもBちゃんは首を振り「それは出来ない」と言った。最後の望みも見事に打ち砕かれた。さらに「お金がないからチップが欲しい。モータバイクのガソリン代もあるし。うちは本当にお金ないから」と彼女。「じゃあ、明日渡すから」と言うもののなかなか諦めない。根負けして300Bを渡した。明日はAM10時に部屋に来る約束となり、彼女は帰って行った。その後、彼女と電話で話し「明日は一人で来て」と言うと彼女は「分かった」と答えた。部屋の外を見ると、まだ雨がしとしとと降っていた。

川沿いのシーフードレストラン:1300B
インターネットショップ1時間:15B(地方は安い!)
タイマッサージ1時間:300B
ステーキレストラン:280B
チップ:300B

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